分度と推譲——二宮尊徳が説いた、富を循環させる技術
働かなくても収入が得られる時代に、富はどう分配されるべきか——ベーシックインカムをめぐる現代の問いに、江戸後期の農政家・二宮尊徳(にのみや・そんとく、1787--1856)は、「分度(ぶんど)」と「推譲(すいじょう)」という独自の経済思想で答えていた。勤勉と倹約の象徴として知られる尊徳の、その根底にある「富を循環させる技術」を訪ねる。
薪を背負った少年、という像の奥にあるもの
二宮尊徳といえば、薪を背負いながら本を読む少年像で知られる。勤勉の代名詞として語られがちだが、彼の本質は単なる精神論者ではない。荒廃した村々を次々と再建した、卓越した実務家であり、経済思想家だった。彼が説いた報徳(ほうとく)思想は、精神論ではなく、富を生み出し循環させるための具体的な技術論だったのである。
尊徳は、数多くの疲弊した農村の復興(仕法)を手がけた。年貢に苦しみ、人口が減り、田畑が荒れた村を、いかに立て直すか。そこで彼が用いたのが、分度と推譲という二つの中核概念だった。
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