札差と蔵宿——武士に金を貸した「与信のプロ」

将来の収入を担保に、いま金を貸す。返済能力をどう見極め、どこまで貸すかを判断する——これは現代の与信業務そのものだ。江戸時代、この高度な金融を、武士という特殊な顧客を相手に営んだ専門家がいた。札差(ふださし)、別名・蔵宿(くらやど)である。俸禄を担保に貸す、江戸の金融工学を訪ねる。

武士の給与を扱う商人

旗本や御家人といった幕府の武士たちは、俸禄を米(蔵米)で受け取った。だが武士の多くは、米を換金する手間や相場の知識を持たない。そこで、彼らに代わって蔵米を受け取り、売却して現金化する商人が現れた。これが札差である。浅草の幕府米蔵周辺に店を構え、武士の俸禄米を扱うことを生業とした。

札差の仕事は、当初は米の受け取りと換金の代行だった。武士は米切手(受給の証票)を札差に預け、札差が蔵から米を受け取り、相場を見て売り、手数料を引いて現金を渡す。武士にとっては面倒な実務を任せられる便利な存在であり、札差にとっては手数料収入を生む堅実な商売だった。


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