家紋と屋号——日本最古の「ブランド標識」
ブランドの価値が、企業の資産の大半を占める時代。そのブランドを守る盾が「商標」だ。だが、特定の印(しるし)に信用と権利を結びつけ、無断使用を許さないという発想は、商標法のはるか以前から日本に存在した。家紋(かもん)と屋号(やごう)である。シンボルが信用を背負うという、ブランドの最も古い形を訪ねる。
印が、その家を表す
家紋は、その家を象徴する図案である。もとは公家や武家が、調度や衣服、旗指物に用いた識別の印だった。戦場で味方を見分け、家の格式や系譜を示す。やがて家紋は武家社会に広く定着し、家の同一性(アイデンティティ)を視覚的に表す標識となった。一つの図案が、その家そのものを指し示したのである。
商家においては、屋号が同様の役割を果たした。「越後屋」「鴻池屋」のように、店の名(屋号)と、それを図案化した暖簾の印や看板が、その商いの主体を表した。客は屋号と印を見て、どの店の商品かを認識し、その店の信用を思い起こす。印が、商いの主体と信用を結びつける媒介だったのである。
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