紋付とTPO——場が、装いを決める

生成AIによるバーチャル試着は、個人の好みに最適化された装いを次々に提案する。装いはますます、自己表現の手段として捉えられる。だが日本の着物文化、とりわけ「紋付(もんつき)」をめぐる作法は、装いを個人の好みではなく、場と格式に応じて決まるものとして規律してきた。それは、「何を着たいか」よりも「その場が何を求めるか」を問う、装いの思想であった。

格を表す、紋付

紋付とは、家紋を染め抜いた和装のことである。とりわけ、黒地に染め抜かれた紋付は、和装のなかでも最も格式の高い礼装とされる。婚礼や葬儀、式典といった、改まった場において着用される。紋の数や入れ方によっても格が変わり、五つ紋がもっとも格式が高いとされた。紋付は、その場の改まりの度合いに応じて選ばれる、格式の装いだったのである。

紋付が示すのは、装いが「格」という秩序のなかにあったことである。日常の普段着から、改まった場の礼装まで、着物には格の序列があった。そして、どの装いを選ぶかは、個人の自由ではなく、その場の格に応じて決まった。格式の高い場には、格式の高い装いを。くだけた場には、それにふさわしい装いを。装いは、場との関係のなかで、その適否が定まった。紋付は、その格の体系の頂点に位置する、最も改まった装いだったのである。


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