田畑に降りるロボット——精密農業と二十四節気・里山の知恵
はじめに——「自然を読む」を機械に教えられるか
衛星測位で誤差数センチの精度で畑を耕す無人トラクター。AIが一株ずつ雑草を見分け、レーザーで焼き払う除草ロボット。植物の活性度を測る指標をもとに、必要な場所にだけ農薬を撒くドローン——。いま農業の現場は、勘と経験の世界から、データと自動化の世界へと大きく舵を切りつつある。
世界の農業ロボット市場は2026年の92億ドルから2034年には374億ドル(CAGR19.2%)へと急成長すると予測される。背景にあるのは、世界共通の課題である農業従事者の高齢化と人手不足だ。とりわけ日本は深刻で、基幹的農業従事者は1985年の346万人から2025年には102万人へと7割も減少し、そのうち70歳以上が55%(約56万人)を占める。
しかし、ここで一つの問いが浮かぶ。農業とは本来、「自然を読む」営みだった。いつ種を播き、いつ水を入れ、いつ刈り取るか——その判断は、季節の微細な移ろいを感じ取る知恵に支えられてきた。日本人はそれを「二十四節気・七十二候」という自然暦に結晶させ、人と自然が循環する「里山」という仕組みを築いてきた。機械は、この「自然を読む」知恵を受け継げるのだろうか。本稿では、精密農業の最前線を確認したうえで、日本の自然暦と里山の思想を補助線に、農業の自動化が向かう先を考える。
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