操る人は、見えない——アバターロボットと黒衣・からくりの系譜
はじめに——「もう一つの身体」を遠隔で動かす
空港の案内カウンターに立つロボットが、来訪者に話しかける。だがその「中の人」は、遠く離れた場所から画面越しに操作しているオペレーターだ。外出が難しい人が、自宅にいながらカフェのロボットを操って接客し、給料を得る。工場では、危険な現場のロボットを、安全な操作室から人が動かす——。
これが「アバターロボット」あるいは「テレプレゼンスロボット」の世界である。遠隔地にいる人間が、もう一つの身体としてロボットを操作し、その場にいるかのように移動・対話・作業を行う。世界のテレプレゼンスロボット市場は2025年に約4億2,370万ドルに達し、2034年までに約12億2,110万ドルへ成長すると予測されている。
この技術が示すのは、奇妙な構図だ。ロボットの前にいる人は、ロボットと対話していると感じる。だが実際にそこに「いる」のは、見えない場所にいる操作者である。操作者は存在しているのに、その場では見えないことになっている——この構図は、日本の舞台芸術が江戸時代から洗練させてきた「黒衣(くろご)」の思想と、驚くほど重なる。本稿では、アバターロボットの現在地を確認したうえで、黒衣とからくり人形という日本の伝統を補助線に、「見えない操作者」が動かす身体の意味を考える。
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