C2PA——本物であることの証明に、誰がいくら払うのか
はじめに——偽物との境界線に、値札が付いた
ドイツの高級カメラメーカー、Leica Camera AGが2023年11月に出したM11-Pは、ボディだけで約9,195米ドルする。シャッターを切った瞬間、その1枚に「いつ、どの機械で撮られたか」を暗号署名で刻み込む機能が付いている。
画質でも、操作感でもない。買っているのは、ほかのカメラには無い証明の機能である。
この仕組みを動かしているのがC2PAだ。正式名はCoalition for Content Provenance and Authenticity。画像や動画が作られた経緯を、暗号署名付きで記録する業界規格である。刻まれた署名の名はContent Credentials。偽物と本物を見分けたい人のために作られたように見える。だが実際に金を払っているのは、見分ける側ではない。見分けられたい側である。
600年前の日本にも、よく似た仕組みがあった。足利義満(あしかがよしみつ、1358年〜1408年)が明との間で始めた勘合貿易は、割符という紙きれ一枚で正規の商人とそれ以外を分けた。証明を持つ者だけが、港に船を入れられたのである。
本物であることの証明は、いったい誰のための費用なのか。カメラの値札から、この問いを追ってみたい。
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