触れることが治療になる——介護・手術ロボットと「手当て」の文化

はじめに——機械が「触れる」時代

ロボットが人間に触れる。それも、介護の現場で身体を支え、手術室で臓器に触れ、力加減を繊細に調整しながら——。かつてSFの領域だったこの光景は、いま医療と介護の現実になりつつある。

その鍵を握るのが「力触覚(ハプティクス)」と呼ばれる技術だ。これは、機械が触れた対象の硬さや抵抗を感知し、操作者の手にその感覚を返す仕組みである。手術支援ロボットの操作者は、画面越しに臓器に触れながら、その弾力や張りを手元のコントローラーで感じ取る。介護ロボットは、人の身体を支えるときの力加減を、繊細にコントロールする。触れることを、機械がどこまで人間のように行えるか——これが、ロボティクスの最前線で問われている。

市場の数字もこの潮流を裏づける。手術支援ロボット市場は2025年の約113億ドルから2035年に約383億ドルへ拡大すると予測され、介護支援ロボット市場は2025年の約34億ドルから2033年に約99億ドルへ、触覚技術(ハプティクス)市場は2025年の約37億ドルから2034年に約81億ドルへ成長すると見込まれている。

ここで興味深いのは、これらの技術が突き詰めているのが、日本語の「手当て」という言葉が古くから体現してきた営み——触れることそのものが、診断であり、治療であり、ケアであるという思想——に、技術の側から接近しているという点だ。本稿では、介護・手術ロボットと力触覚技術の現在地を確認したうえで、日本の「手当て」「按摩・指圧」の文化を補助線に、「触れる」という行為の意味を問い直す。

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