「指頭に心眼を開く」——按摩・指圧という診断即治療の技
手術支援ロボットや介護ロボットの開発で、いま最も重視されている技術のひとつが「ハプティクス(力触覚フィードバック)」である。機械の手が、触れた対象の硬さや抵抗を感じ取り、その情報をもとに動きを調整する。日本の手技療法——按摩、そして指圧——は、まさにこの「触れて感じ、感じながら施す」という営みを、職人の手のなかで完成させてきた。
按摩と指圧——2つの系譜
按摩は中国発祥の手技療法であり、生体の持つ恒常性維持機能を反応させて健康を増進させることを目的とする。日本には養老令(718年)において、唐の制度に倣い典薬寮に按摩博士や按摩師が置かれたという記録が残る。江戸時代には、藤林良伯(ふじばやし・りょうはく)『按摩手引』(1799年)、太田晋斎(おおた・しんさい)『按腹図解』(1827年)などにより体系化され、鍼・按摩の教育で知られる杉山和一(すぎやま・わいち、1610–1694。杉山流)の系譜が広く知られるようになった。
一方、指圧は日本固有の手技療法であり、浪越徳治郎(なみこし・とくじろう、1905–2000)によって創始された。その本質は「診断即治療」という概念にある。訓練を受けた指圧師は、敏感な手指——「手の目」「指頭に心眼を開く」と表現される——を用いて、一押し一押しで皮膚や筋肉の異常を感じ取り、患者の身体の状態を正確に診断しながら、同時にその状態に合わせて治療を行う。診断と治療が、同じ「押す」という1つの動作のなかで同時に進行する。
この記事の続きは会員限定です。