宇宙が「市場」になった年——民間ロケット経済と、糸川英夫がペンシルロケットに懸けた夢
はじめに——宇宙が「インフラ」になる日
もし海外の宇宙スタートアップ創業者に「日本には、宇宙を目指した原点はあるのか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。 2026年、世界の宇宙経済は$6270億に達し、2035年には$1.8兆規模に成長するとWorld Economic Forumが予測している。SpaceXのStarshipは打ち上げコストを1kgあたり$100以下に引き下げる見通しで、従来のスペースシャトル時代(1kgあたり$54,500)から500倍以上のコスト削減が実現しつつある。Rocket Lab($120億時価総額)、Planet Labs($28億)、Axiom Space($50億超)といった民間企業が、かつて国家の独占だった宇宙を「ビジネスの場」に変えている。 この変化の核心は、宇宙が「探検」から「インフラ」に変わりつつあることにある。通信衛星、地球観測、測位、宇宙製造——宇宙は地上経済を支える基盤になろうとしている。しかし、「限られた資源で宇宙を目指す」という挑戦を、世界に先駆けて独自のアプローチで実践した人物が、70年前の日本にいた。糸川英夫(いとかわ・ひでお、1912–1999)——全長23cmの「ペンシルロケット」から日本の宇宙開発を切り拓いた「日本のロケット開発の父」である。 本稿では、宇宙経済の現在地を確認したうえで、糸川英夫と種子島宇宙センターの歩みを補助線に、「宇宙が民主化する時代」の本質を考える。
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