メルカリ——山田進太郎の「世界の「捨てる」を変える」挑戦
はじめに——GMV1兆円、日本最大のCtoCマーケットプレイス
2025年6月期、メルカリの連結売上収益は1,926億円、コア営業利益は275億円(前期比46%増)、純利益は261億円(同94%増)と、3期連続で過去最高益を更新した。フリマアプリ「メルカリ」の国内GMV(流通総額)は年間1兆円を超え、月間利用者数は2,300万人以上に達する。
さらに2025年6月期には、長年の課題だった米国事業(Mercari US)が初の通期黒字化を達成した。2014年の米国進出から11年——日本発のテックスタートアップが、世界最大の消費市場で収益化に成功した稀有な事例である。
メルカリの本質は、「フリマアプリ」という言葉では捉えきれない。それは、個人が持つ「使わなくなったモノ」という巨大な潜在資産を、テクノロジーの力で流動化させるプラットフォームである。日本の家庭に眠る不用品の推定価値は約44兆円——メルカリはこの「隠れた資産」を経済活動に変換する装置なのだ。
しかし、この急成長企業の原点は、1人の起業家が世界一周の旅で抱いた「もったいない」という感覚にある。
山田進太郎——連続起業家の旅
ウノウからZyngaへ
山田進太郎(やまだ・しんたろう、1977–)は愛知県瀬戸市出身。早稲田大学教育学部在学中からインターネット事業に関わり、楽天でのインターンを経て、2001年に「ウノウ」を設立する。ウノウは写真共有サービス「フォト蔵」やソーシャルゲーム「まちつく!」を手がけ、2010年に米国のソーシャルゲーム大手Zyngaに売却された。
ウノウの売却は、山田にとって「成功」であると同時に「物足りなさ」でもあった。ウノウは良い会社だったが、世界を変えるほどのインパクトはなかった。山田は「次にやるなら、もっと大きなことをしたい」と考えていた。
世界一周で見た「循環」
Zynga売却後、山田は世界一周の旅に出る。約半年間、南米、アフリカ、中東、東南アジアなど数十カ国を巡った。
この旅が、メルカリ誕生の直接のきっかけとなった。山田は旅の中で、新興国の人々が限られたモノを大切に使い回す姿を目にした。ケニアのナイロビでは、古着が何度も転売され、最後の一枚まで使い切られていた。インドでは、壊れた電子機器が修理されて再び市場に出回っていた。
一方、日本では大量のモノが使われないまま家庭に眠り、やがて捨てられていく。日本の家庭に眠る不用品の推定価値は約44兆円(環境省推計)。この「もったいない」という感覚が、メルカリの原点となった。
山田がメルカリで実現しようとしたのは、個人間取引(CtoC)のプラットフォームを通じて、不要品に新たな持ち主を見つけ、モノの寿命を延ばすことだった。これは単なるビジネスアイデアではなく、「地球の資源を有限と捉え、循環させる」という思想に基づいている。
なぜ「フリマ」だったのか
山田が帰国した2012年末、スマートフォンの普及率は急速に上昇していた。山田は「スマートフォンのカメラとGPS、そしてモバイル決済を組み合わせれば、個人間取引のハードルを劇的に下げられる」と確信した。
当時の個人間取引市場は、ヤフオク(Yahoo!オークション)が圧倒的に支配していた。しかしヤフオクはPC時代のサービスであり、スマートフォン時代に最適化されていなかった。山田は「スマホネイティブの個人間取引プラットフォーム」に巨大な市場機会を見出した。
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