100歳まで稼ぐ経済圏——$6.8兆ウェルネス市場と、貝原益軒が300年前に書いた処方箋
はじめに——「治す」から「老いない」へ、医療経済の重心が動いた
もし海外の投資家に「日本には、長寿を科学する伝統はあったのか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。 2026年、ロンジェビティ(長寿)産業の市場規模は$740億を超え、2030年には$27兆に達するとの予測もある。GLP-1受容体作動薬の市場は2023年の$717億から2030年には$1500億規模へ拡大する見通しで、もはや「痩せ薬」ではなく心血管疾患・腎臓病・アルツハイマー病への適応拡大が進む。Noom(Noom Inc.)は2025年12月にロンジェビティ領域へ参入し、GLP-1マイクロドーズ・プログラムを開始した。デジタルヘルスのベンチャー投資は2026年上半期だけで$74億に達している。 この潮流の核心は、医療の目的が「病気を治す」から「老化そのものを遅らせる」へ移行しつつあることにある。病気になってから治療するのではなく、病気にならない身体を設計する——この発想は、じつは300年前の日本に、驚くほど体系的な先行者がいた。儒学者・本草学者の貝原益軒(かいばら・えきけん、1630–1714)が1713年に著した『養生訓』である。本稿では、ロンジェビティ経済の現在地を確認したうえで、養生訓と日本の「未病」文化を補助線に、「老いない経済圏」の本質を考える。
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