寺子屋の個別進度——一人ひとりに合わせた、江戸の学び

AIアダプティブ学習は、一人ひとりの習熟度に合わせて教材を出し分ける「個別最適化」を売りにする。だが、子ども一人ひとりの進み具合に合わせて学びを設計するという発想は、江戸時代の寺子屋がすでに実践していた。一斉授業が当たり前になる前、日本の庶民教育は、徹底して個別の歩みに寄り添うものであった。

一斉ではなく、個別に

寺子屋は、江戸時代に町や村に広く普及した、庶民のための教育施設である。読み・書き・そろばんを中心に、子どもたちが手習いを学んだ。その教育の最大の特徴は、今日の学校のような一斉授業ではなく、一人ひとりの進度に応じた個別の指導だったことである。

寺子屋では、子どもたちは皆が同じ教材を同じ速さで学ぶのではなかった。一人ひとりが、自分の手本に向かって、自分の速さで手習いを進める。師匠は、子どもたちの間を回り、それぞれの段階に応じて手本を与え、出来栄えを見て直しを入れた。年齢も、入門の時期も、得意不得意もばらばらの子どもたちが、同じ部屋にいながら、それぞれ異なる課題に取り組む。学びの単位は「クラス」ではなく「個人」だったのである。


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