講と無尽——日本型クラウドファンディングの原型

はじめに

家を建てたい。だが、まとまった資金がない。江戸時代の庶民が直面したこの問題に対する解は、銀行ローンではなかった。仲間10人で月々の掛金を出し合い、抽選か入札で順番に給付を受ける——「無尽」あるいは「頼母子講(たのもしこう)」と呼ばれる相互扶助の金融システムである。1275年の『高野山文書』に最古の記録が残るこの仕組みは、鎌倉時代から沖縄の「模合(もあい)」まで、800年にわたって日本社会を支え続けてきた。

2026年、ギグエコノミーで働く労働者たちは、別の問題に直面している。データラベラー、Uber ドライバー、フードデリバリー配達員——彼らは個人事業主として孤立し、傷病時の保障も、退職金もない。米国では、急な400ドルの支出に耐えられない成人が4割を超えるという調査がある。この空白を埋めるため、講の仕組みを現代化したアプリ「Esusu」(米国)や、ブロックチェーンによるコミュニティ通貨(ケニア)が登場し始めた。なぜ今、800年前の日本の知恵が再評価されているのか。本稿は、講の経済学を現代に接続して読み解く。

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